
「派遣で働くけど、給与から社会保険料がいくら引かれるんだろう?」
「給与明細を見たけど、手取り額の計算方法がよくわからない…」
派遣社員として働くうえで、社会保険料は避けて通れないテーマです。毎月の給与から天引きされる金額を見て、思ったより手取りが少ないと感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、派遣社員の方々が抱える社会保険料の疑問を解決します。あなたの給与額から天引きされる社会保険料を簡単に計算できるシミュレーションから、給与別の早見表、そして自分で計算できる詳細なガイドまで、専門知識がなくても理解できるよう分かりやすく解説します。
この記事を読めば、ご自身の社会保険料がいくらになるのか、手取り額はどのくらいになるのかを正確に把握できます。将来の働き方を考えるうえでも、ぜひ参考にしてください。

派遣の社会保険料計算シミュレーション

まずは、あなたの給与から天引きされる社会保険料がいくらになるのか、シミュレーションしてみましょう。月給と賞与(ボーナス)それぞれの場合で計算できます。
※以下のシミュレーションは、協会けんぽ(東京都・令和6年度)の保険料率、40歳未満の方を対象とした概算です。正確な金額は給与明細をご確認ください。
月給から天引きされる保険料を計算
毎月の給与から引かれる社会保険料は、「標準報酬月額」という基準額をもとに計算されます。これは、給与を一定の区切りで分けた等級のようなものです。
【計算例:月給25万円(東京都・40歳未満)の場合】
- 標準報酬月額の決定
月給25万円の場合、標準報酬月額は「26万円」となります。 - 各保険料の計算(自己負担額)
- 健康保険料
26万円 × 9.98% ÷ 2 = 12,974円 - 厚生年金保険料
26万円 × 18.3% ÷ 2 = 23,790円 - 雇用保険料
25万円 × 0.6% = 1,500円
- 健康保険料
- 社会保険料の合計額
12,974円 + 23,790円 + 1,500円 = 38,264円
この結果、月給25万円の場合、社会保険料として約38,264円が天引きされる計算になります。
賞与(ボーナス)から天引きされる保険料を計算
賞与からも月給と同じように社会保険料が引かれます。計算の基礎となるのは、税引前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」です。
【計算例:賞与30万円(東京都・40歳未満)の場合】
- 標準賞与額の決定
賞与30万円の場合、標準賞与額は「30万円」です。 - 各保険料の計算(自己負担額)
- 健康保険料
30万円 × 9.98% ÷ 2 = 14,970円 - 厚生年金保険料
30万円 × 18.3% ÷ 2 = 27,450円 - 雇用保険料
30万円 × 0.6% = 1,800円
- 健康保険料
- 社会保険料の合計額
14,970円 + 27,450円 + 1,800円 = 44,220円
賞与が30万円支給された場合、社会保険料として約44,220円が引かれることになります。
年収から手取り額をシミュレーション
年収ベースで手取り額を知りたい方も多いでしょう。ここでは、月給と賞与(2ヶ月分と仮定)を合わせた年収から、社会保険料と所得税・住民税を引いた手取り額の概算を見てみましょう。
【計算例:月給25万円、賞与50万円(年1回)の場合】
- 年収
25万円 × 12ヶ月 + 50万円 = 350万円 - 社会保険料(年間)
月々の保険料(38,264円 × 12ヶ月) + 賞与の保険料(約6万円※) ≒ 約52万円
※賞与50万円の場合の社会保険料は約6万円 - 課税所得
350万円 – 52万円(社会保険料控除) – 48万円(基礎控除)など ≒ 約250万円 - 所得税・住民税(年間)
所得税(約13万円) + 住民税(約25万円) ≒ 約38万円 - 年間手取り額(概算)
350万円 – 52万円 – 38万円 = 約260万円
あくまで概算ですが、年収350万円の場合、手取り額は約260万円前後になると予測できます。
給与・年収別の社会保険料早見表

シミュレーションは少し複雑だと感じた方のために、給与額ごとの社会保険料がひと目でわかる早見表をご用意しました。ご自身の給与に近い欄をチェックしてみてください。
※協会けんぽ(東京都・令和6年度)の保険料率、40歳未満の方を対象とした概算です。
【月給別】社会保険料の自己負担額一覧
| 報酬月額(交通費等含む) | 標準報酬月額 | 健康保険料 | 厚生年金保険料 | 雇用保険料 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 200,000円 | 200,000円 | 9,980円 | 18,300円 | 1,200円 | 29,480円 |
| 220,000円 | 220,000円 | 10,978円 | 20,130円 | 1,320円 | 32,428円 |
| 240,000円 | 240,000円 | 11,976円 | 21,960円 | 1,440円 | 35,376円 |
| 260,000円 | 260,000円 | 12,974円 | 23,790円 | 1,560円 | 38,324円 |
| 280,000円 | 280,000円 | 13,972円 | 25,620円 | 1,680円 | 41,272円 |
| 300,000円 | 300,000円 | 14,970円 | 27,450円 | 1,800円 | 44,220円 |
| 320,000円 | 320,000円 | 15,968円 | 29,280円 | 1,920円 | 47,168円 |
【年収別】社会保険料と手取り額の概算
| 年収 | 社会保険料(年間) | 税金(所得税・住民税) | 手取り額(年間) |
|---|---|---|---|
| 250万円 | 約37万円 | 約10万円 | 約203万円 |
| 300万円 | 約44万円 | 約16万円 | 約240万円 |
| 350万円 | 約52万円 | 約22万円 | 約276万円 |
| 400万円 | 約59万円 | 約29万円 | 約312万円 |
| 450万円 | 約66万円 | 約37万円 | 約347万円 |
| 500万円 | 約73万円 | 約45万円 | 約382万円 |
※上記は賞与なし、扶養家族なしの場合の概算です。
【都道府県別】協会けんぽの健康保険料率
健康保険料率は、加入している健康保険組合とお住まいの都道府県によって異なります。ここでは、多くの派遣社員が加入する「協会けんぽ」の令和6年度の料率を一部ご紹介します。
| 都道府県 | 健康保険料率(40歳未満) | 健康保険料率(40歳以上) |
|---|---|---|
| 北海道 | 10.03% | 11.83% |
| 東京都 | 9.98% | 11.78% |
| 愛知県 | 10.00% | 11.80% |
| 大阪府 | 10.34% | 12.14% |
| 福岡県 | 10.25% | 12.05% |
| 全国平均 | 10.00% | 11.82% |
(参考:全国健康保険協会 令和6年度都道府県単位保険料率 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3130/r06/240205/)
ご自身の都道府県の料率を確認することで、より正確な保険料を計算できます。
社会保険料の計算方法【手計算ガイド】

シミュレーターや早見表だけでなく、自分で社会保険料を計算する方法も知っておくと、給与明細への理解がさらに深まります。ここでは、各保険料の計算方法をステップごとに解説します。
計算の基礎「標準報酬月額」とは
社会保険料の計算を理解するうえで最も重要なのが「標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)」です。
標準報酬月額とは
社会保険料を計算しやすくするために、毎月の給与(基本給+残業代+交通費など)を一定の範囲(等級)で区切った金額のことです。
例えば、東京都の場合、給与が25万円以上27万円未満の人は、標準報酬月額が一律で「26万円」と定められています。この「26万円」を基準に健康保険料や厚生年金保険料が計算されるため、給与が数千円変動しても保険料は変わりません。
健康保険料・介護保険料の計算式
健康保険料は、病気やケガをした際の医療費負担を軽減するための保険です。計算式は以下の通りです。
標準報酬月額 × 健康保険料率 ÷ 2(自己負担分)
また、40歳になると介護保険への加入が義務付けられ、健康保険料に上乗せして介護保険料を支払う必要があります。
標準報酬月額 × (健康保険料率 + 介護保険料率) ÷ 2(自己負担分)
厚生年金保険料の計算式
厚生年金保険料は、将来受け取る年金(老齢年金)や、障害・死亡時に給付される年金のための保険です。計算式はシンプルです。
標準報酬月額 × 厚生年金保険料率(18.3%) ÷ 2(自己負担分)
厚生年金保険料率は、現在18.3%で固定されています。
(参考:日本年金機構 厚生年金保険料額表 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/gakuhyo/index.html)
雇用保険料の計算式
雇用保険料は、失業した際の失業手当や、育児・介護休業中の給付金などの財源となる保険です。こちらは標準報酬月額ではなく、毎月の給与総額(交通費なども含む)に料率をかけて計算します。
給与総額 × 雇用保険料率(0.6%)
令和6年度の労働者負担の雇用保険料率は0.6%です(一般の事業の場合)。
(参考:厚生労働省 令和6年度の雇用保険料率について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000108634.html)

派遣社員の社会保険加入条件

「そもそも自分は社会保険に加入する必要があるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。ここでは、派遣社員が社会保険に加入する条件について解説します。
社会保険の種類とそれぞれの役割
一般的に「社会保険」と呼ばれるものには、以下の種類があります。
- 健康保険
病気やケガで医療機関にかかった際の医療費負担を軽減します。 - 介護保険
40歳以上が加入。介護が必要になった際にサービスを受けるための保険です。 - 厚生年金保険
老後の生活を支える老齢年金や、万が一の際の障害年金・遺族年金のための保険です。 - 雇用保険
失業した際の生活を支える失業手当や、育児・介護休業給付の財源となります。 - 労災保険
仕事中や通勤中のケガ・病気に対して給付が行われます。
派遣社員が加入する社会保険の種類
派遣社員は、派遣会社(派遣元)の社会保険に加入します。上記の5つの保険のうち、健康保険、介護保険(40歳以上)、厚生年金保険、雇用保険の4つの保険料が給与から天引きされます。労災保険の保険料は全額派遣会社が負担します。
加入義務が発生する2つの要件
派遣社員が社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入義務を負うのは、主に以下の2つの要件を両方とも満たす場合です。
- 1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が、同じ事業所で働く正社員の4分の3以上であること
一般的に、週30時間以上働く場合はこの条件に該当します。
上記の条件を満たさない短時間労働者の方でも、以下の要件をすべて満たす場合は加入対象となります。
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 月額賃金が8.8万円以上であること
- 雇用期間が2ヶ月を超える見込みがあること
- 学生でないこと
これらの条件に当てはまる場合は、派遣会社を通じて社会保険に加入する義務があります。
社会保険料の内訳と会社・自己負担割合

毎月引かれている社会保険料ですが、実はその全額を自分だけで負担しているわけではありません。会社(派遣会社)も同額、あるいはそれ以上を負担してくれています。ここでは、それぞれの保険料の負担割合を見ていきましょう。
健康保険料の負担割合
健康保険料は、従業員(あなた)と会社(派遣会社)が半分ずつ負担(労使折半)します。給与明細に記載されているのは、あなたが負担する半額分です。
厚生年金保険料の負担割合
厚生年金保険料も健康保険料と同様に、従業員と会社が半分ずつ負担します。将来の年金のために、会社も同額を積み立ててくれていると考えると、少し見方が変わるかもしれません。
雇用保険料の負担割合
雇用保険料の負担割合は、健康保険や厚生年金とは少し異なります。令和6年度(一般の事業)の場合、負担割合は以下の通りです。
- 従業員負担
0.6% - 会社負担
0.95%
雇用保険料は、会社の方が多く負担してくれています。
労災保険料は全額会社負担
仕事中や通勤中のケガなどに備える労災保険の保険料は、全額、会社(派遣会社)が負担します。そのため、給与から天引きされることはありません。
派遣社員の社会保険に関するQ&A

最後に、派遣社員の方が社会保険に関して抱きがちな疑問にお答えします。
なぜ派遣の社会保険料は高いと感じる?
「派遣の社会保険料は高い」と感じる理由は、主に2つ考えられます。
- 国民健康保険・国民年金からの切り替え
以前、扶養に入っていたり、自分で国民健康保険・国民年金を支払っていたりした場合、厚生年金が加わることで負担額が増えるため、高く感じることがあります。 - 交通費も計算対象になるため
社会保険料の計算基礎となる標準報酬月額には、基本給だけでなく交通費も含まれます。そのため、交通費が高額な場合、想定よりも保険料が高くなることがあります。
しかし、厚生年金に加入することで将来もらえる年金額が増えるなど、負担が増える分、保障も手厚くなるというメリットがあります。
正社員の社会保険料と違いはある?
基本的に、派遣社員と正社員で社会保険料の計算方法や保険料率に違いはありません。同じ給与額であれば、引かれる保険料も同じです。
ただし、大企業などの正社員は、協会けんぽではなく独自の「健康保険組合(組合健保)」に加入している場合があります。組合健保は協会けんぽより保険料率が低いことがあるため、その場合は正社員の方が手取り額が多くなる可能性があります。
交通費は社会保険料の計算対象?
はい、交通費(通勤手当)は社会保険料の計算対象に含まれます。標準報酬月額は、基本給や各種手当だけでなく、交通費も含めた「報酬」の総額で決まります。そのため、同じ時給でも交通費の支給額によって社会保険料が変わることがあります。
40歳になると介護保険料の負担が始まる
満40歳になると、介護保険の第2号被保険者となり、介護保険料の支払いが始まります。誕生日の前日が含まれる月から徴収が開始され、健康保険料と合わせて給与から天引きされます。これにより、30代の頃と比べて社会保険料の負担が増えることになります。
まとめ

今回は、派遣社員の社会保険料について、計算シミュレーションから手計算の方法、加入条件まで詳しく解説しました。
- 社会保険料はシミュレーターや早見表で簡単に概算できる
- 計算の基礎は「標準報酬月額」で、交通費も含まれる
- 健康保険料と厚生年金保険料は、会社と自分で半分ずつ負担している
- 派遣社員も一定の条件を満たせば社会保険への加入義務がある
- 40歳になると介護保険料の負担が始まる
給与から天引きされる社会保険料は、決して小さな金額ではありません。しかし、それは病気やケガ、失業、そして老後といった将来のリスクに備えるための重要なコストです。
この記事を通じて、ご自身の社会保険料がどのように決まっているのかを理解し、安心して働き続けるための一助となれば幸いです。正確な金額については、必ず派遣会社から発行される給与明細を確認するようにしてください。
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