
「正社員と同じ仕事をしているのに、なぜか待遇が違う…」
「今の派遣先で、3年後も働き続けられるのかな?」
派遣社員として働く中で、このような疑問や不安を感じていませんか?
実は、2020年4月から本格的に始まった「働き方改革」によって、派遣社員の待遇や働き方は大きく変わりました。この改革の目的は、正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差をなくし、誰もが納得して働ける環境を作ることです。
この記事では、派遣社員として知っておくべき「働き方改革」の重要ポイントを、専門用語を避けながら分かりやすく解説します。
- 同一労働同一賃金で給与や待遇はどう変わるのか
- 派遣の3年ルールと今後のキャリアの選択肢
- 待遇に疑問があるときに何をすべきか
これらの内容を理解すれば、ご自身の権利を知り、自信を持って今後の働き方を考えられるようになります。ぜひ最後まで読んで、あなたのキャリアプランに役立ててください。

働き方改革で派遣の待遇はどう変わったか

働き方改革の中でも、派遣社員に特に関係が深いのは「労働者派遣法(派遣法)」の改正です。この法改正により、主に3つの大きな変化がありました。
①不合理な待遇差の是正(同一労働同一賃金)
働き方改革の最大の柱が「同一労働同一賃金」の導入です。これは、同じ仕事をしているなら、正社員や派遣社員といった雇用形態に関わらず、同じ待遇を受けられるようにしようという考え方です。
これにより、基本給や賞与だけでなく、各種手当や福利厚生などにおいて、正社員と派遣社員の間にある不合理な待遇差が禁止されました。
②雇用安定措置の強化(派遣法改正)
派遣社員が同じ職場で長期間安定して働けるように、派遣会社(派遣元)に対して雇用を安定させるための措置を講じることが義務付けられました。
特に、同じ派遣先の同じ部署で3年間働いた派遣社員に対しては、派遣会社が新たな就業機会を確保する責任があります。これがいわゆる「3年ルール」に関連する重要なポイントです。
③派遣会社からの情報提供・説明義務
派遣社員が自分の待遇について正しく理解できるよう、派遣会社から派遣社員への説明義務が強化されました。
具体的には、雇い入れ時や派遣開始時に、賃金の決定方法や待遇の内容について、詳しく説明することが義務付けられています。もし説明に納得できない場合は、派遣会社に説明を求めることができます。
同一労働同一賃金の2つの方式

「同一労働同一賃金」を実現するため、派遣会社は以下の2つの方式のいずれかを選択して、派遣社員の待遇を決定することになりました。どちらの方式が採用されているかによって待遇の決まり方が異なるため、非常に重要です。
①派遣先均等・均衡方式
派遣先均等・均衡方式とは、派遣先の正社員の待遇を基準に、派遣社員の待遇を決定する方式です。
- 均等待遇
職務内容や責任の範囲、配置の変更範囲が派遣先の正社員と「同じ」場合、差別的な取り扱いが禁止されます。 - 均衡待遇
職務内容などに「違い」がある場合、その違いに応じた範囲での待遇差は許容されますが、不合理な待遇差は禁止されます。
簡単に言うと、派遣先の会社の給与テーブルや福利厚生を参考にして、あなたの待遇が決まるということです。
②労使協定方式
労使協定方式とは、派遣会社と労働者の過半数で組織する労働組合(または労働者の過半数を代表する者)との間で結ばれる協定(労使協定)に基づいて、派遣社員の待遇を決定する方式です。
この方式では、厚生労働省が発表する「同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額」と同等以上の賃金であることが求められます。
多くの派遣会社では、こちらの労使協定方式が採用されています。なぜなら、派遣先が変わるたびに待遇を見直す必要がある「派遣先均等・均衡方式」に比べ、派遣会社が自社の基準で安定した待遇を決定できるためです。
あなたにとってのメリットは、派遣先が変わっても一定水準の賃金が確保される点にあります。
(参考:厚生労働省「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」)
対象となる待遇(基本給・賞与・交通費)
同一労働同一賃金の対象となるのは、月々の給料だけではありません。以下のあらゆる待遇が対象となります。
- 基本給
仕事内容や経験、能力、成果などが同じであれば、正社員と同じ基準で決定されなければなりません。 - 賞与(ボーナス)
派遣先の正社員に賞与が支給されており、会社の業績への貢献度が同じであれば、派遣社員にも同じように支給する必要があります。労使協定方式の場合は、協定の内容に基づいて支給の有無や金額が決まります。 - 各種手当
役職手当、特殊作業手当、精皆勤手当、年末年始勤務手当など、業務に関連する手当は対象となります。 - 交通費
原則として、正社員に支給されている場合は派遣社員にも支給されなければなりません。実費支給が基本ですが、労使協定方式の場合は「一般労働者の通勤手当に相当する額」として時給に含まれている場合もあります。 - 福利厚生
食堂、休憩室、更衣室などの利用はもちろん、慶弔休暇や健康診断、病気休職なども不合理な差があってはなりません。
自分がどちらの方式か確認する方法
自分がどちらの方式で待遇が決められているかを知ることは非常に重要です。以下の方法で確認できます。
- 雇用契約書(就業条件明示書)を確認する
派遣会社と契約を結ぶ際に受け取る書類に、どちらの方式が適用されるか明記されています。多くの場合、「労使協定の対象となる派遣労働者か否かの別」といった項目があります。 - 派遣会社の担当者に直接質問する
書類を見ても分からない場合や、より詳しい説明が必要な場合は、派遣会社の担当者に直接確認しましょう。「私の待遇は、派遣先均等・均衡方式と労使協定方式のどちらで決まっていますか?」と尋ねるのが確実です。
派遣の3年ルールと雇用安定措置

「派遣で働けるのは最長3年まで」と耳にしたことがあるかもしれません。これが「3年ルール」と呼ばれるものですが、「3年経ったらクビになる」という意味ではないのでご安心ください。これはむしろ、派遣社員の雇用を安定させるための制度です。
3年ルールの仕組みと対象外のケース
派遣法では、派遣社員が同じ組織(課やグループなど)で働ける期間の上限を原則3年間と定めています。これを「個人単位の期間制限」と呼びます。
ただし、以下のようなケースでは3年ルールの対象外となります。
- 派遣元(派遣会社)で無期雇用されている派遣社員
- 60歳以上の派遣社員
- 有期のプロジェクト業務に従事する場合
- 日数限定業務(1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下)
- 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得する社員の代替業務
3年経過後の4つの選択肢
派遣社員として同じ組織で3年間勤務した場合、派遣期間が終了する(抵触日を迎える)ことになります。その際、派遣会社はあなたに対して、雇用を継続させるための措置(雇用安定措置)を講じる義務があります。具体的には、以下の4つの選択肢が提示されることになります。
- 派遣先への直接雇用の依頼
派遣会社から派遣先企業に対し、あなたを正社員や契約社員として直接雇用するように依頼してもらいます。 - 新たな派遣先の提供
現在の派遣先とは別の、新たな派遣先を紹介してもらいます。もちろん、あなたのスキルや希望条件に合った仕事です。 - 派遣元での無期雇用
現在登録している派遣会社で、期間の定めのない「無期雇用派遣」の社員として雇用してもらいます。 - その他、安定した雇用の継続を図るための措置
有給の教育訓練の実施など、上記以外で雇用の安定を図るための措置が取られます。
これらの選択肢の中から、あなたの希望やキャリアプランに合った道を選ぶことができます。
派遣元での無期雇用転換とは
選択肢の中でも特に注目したいのが「派遣元での無期雇用」です。
無期雇用派遣とは、派遣会社と期間の定めのない雇用契約を結び、派遣先で就業する働き方です。
最大のメリットは、雇用が安定することです。派遣先での就業期間が終了しても、派遣会社との雇用関係は続くため、次の派遣先が見つかるまでの待機期間中も給与が支払われる場合があります。また、昇給や賞与、退職金制度などが適用されることも多く、キャリアアップや収入の安定につながります。
クーリング期間と「3年ルール廃止」の噂
「3ヶ月と1日以上」仕事から離れると、それまでの就業期間がリセットされ、再び同じ組織で働けるようになる制度を「クーリング期間」と呼びます。
一部で「3年ルールが廃止される」という噂が流れることがありますが、2024年現在、3年ルールが廃止されるという公式な情報はありません。 このルールは派遣社員のキャリアアップと雇用安定を促すための重要な制度として、引き続き運用されています。

2020年以降の派遣法改正の要点

働き方改革の中でも、派遣社員にとって最も大きな影響があったのが2020年の法改正です。その後の動向も含めてポイントを押さえておきましょう。
2020年4月1日施行の改正内容
2020年4月1日に施行された改正派遣法は、まさに「同一労働同一賃金」を派遣社員に適用するためのものでした。
- 不合理な待遇差の解消
「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」により、正社員との間の不合理な待遇差をなくすことが義務化されました。 - 派遣労働者への待遇に関する説明義務の強化
派遣会社は、派遣社員に対して、どのような待遇が、どのような理由で決定されているのかを詳しく説明する義務を負うことになりました。 - 行政への報告義務
派遣会社は、待遇差の内容や理由について労働者から訴えがあった場合、話し合った内容などを記録し、行政(労働局)に報告する義務が課されました。
2021年以降の改正動向
2020年の大きな改正以降も、派遣社員の権利を守るための見直しは続いています。
- 2021年1月1日施行
派遣契約を電子化(電磁的記録)で締結することが可能になりました。 - 2021年4月1日施行 派遣会社は、派遣社員に対して以下の情報提供が義務付けられました。
- 派遣元での教育訓練に関する情報
- 希望者へのキャリアコンサルティングの機会提供
- 派遣会社の事業運営に関する情報(マージン率など)
これにより、派遣社員は自身のキャリア形成や派遣会社の透明性について、より多くの情報を得られるようになりました。
派遣会社に求められる対応
これらの法改正を受けて、派遣会社は以下のような対応を求められています。
- 「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」のいずれかを選択し、社内制度を整備する。
- 労使協定方式を選択する場合は、適切な労使協定を締結する。
- 派遣社員一人ひとりに対して、待遇に関する詳細な情報提供と説明を行う。
- 雇用安定措置(3年ルールへの対応)を計画的に実施する。
- キャリアコンサルティングや教育訓練の機会を提供する。
信頼できる派遣会社は、これらの対応を誠実に行っています。
待遇改善のために派遣社員ができること

法改正の内容を知った上で、もしご自身の待遇に疑問や不満がある場合、泣き寝入りする必要はありません。以下の行動を起こすことができます。
派遣元の担当者に待遇の説明を求める
まずは、派遣会社の担当者に、ご自身の待遇について詳しい説明を求めましょう。 これは法律で保障されたあなたの権利です。
「私の給与は、同一労働同一賃金の原則に基づき、どのように決定されていますか?」
「正社員の方と業務内容が同じですが、待遇の違いについて理由を説明してください。」
このように具体的に質問することで、明確な回答を得やすくなります。
自身の雇用契約と労使協定を確認する
担当者への質問と並行して、手元にある雇用契約書や就業条件明示書を改めて確認しましょう。
特に「労使協定方式」が適用されている場合は、その協定の内容を確認することが重要です。労使協定は、原則として社員が閲覧できるようになっているはずです。もし手元になければ、派遣会社に開示を求めてください。
待遇に納得できない場合の相談窓口
派遣会社に説明を求めても納得のいく回答が得られなかったり、対応してもらえなかったりした場合は、第三者の専門機関に相談するという選択肢があります。
- 都道府県労働局
全国に設置されている行政機関で、労働に関する問題について無料で相談に乗ってくれます。必要に応じて、派遣会社への助言や指導を行ってくれることもあります。
(参考:厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」 https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html) - 労働組合
個人で加入できる地域の労働組合(ユニオン)などに相談することも有効です。専門家があなたの代わりに会社と交渉してくれる場合もあります。
働き方改革と派遣に関するQ&A

最後に、派遣社員の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q.正社員と全く同じ給料になりますか?
A. 必ずしも「全く同じ金額」になるとは限りません。
同一労働同一賃金は、「不合理な」待遇差をなくすためのものです。仕事の内容、責任の範囲、経験、能力などに違いがあれば、それに応じた待遇差は「合理的」と判断される場合があります。
ただし、何の理由もなく「派遣だから」というだけで給料が低いのは違法です。その差が合理的なものかどうかが重要なポイントになります。
Q.交通費は必ず支給されますか?
A. 原則として支給されるべきですが、支給方法が異なる場合があります。
「派遣先均等・均衡方式」の場合、派遣先の正社員に交通費が支給されていれば、あなたにも同じように支給されなければなりません。
一方、「労使協定方式」の場合は、時給の中に交通費相当額が含まれているケースがあります。この場合、別途交通費が支給されなくても違法ではありません。ご自身の給与明細や雇用契約書を確認し、交通費がどのように扱われているかチェックしてみましょう。
Q.3年経ったら直接雇用を申し入れできますか?
A. あなたから直接申し入れる権利はありませんが、派遣会社に「直接雇用の依頼」をしてもらうよう希望を伝えることができます。
3年ルールの雇用安定措置として、派遣会社が派遣先に「直接雇用してください」と依頼する義務があります。そのため、まずは派遣会社の担当者に「派遣先での直接雇用を希望しています」という意思を明確に伝えることが第一歩です。
最終的に直接雇用するかどうかは派遣先の判断になりますが、あなたの希望を伝えることで道が開ける可能性があります。
まとめ

今回は、働き方改革が派遣社員の働き方に与える影響について、特に「同一労働同一賃金」と「3年ルール」を中心に解説しました。
- 同一労働同一賃金により、正社員との不合理な待遇差は禁止された。
- 待遇の決定方式には「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2つがある。
- 3年ルールはクビ切りではなく、雇用を安定させるための制度。3年経過後は直接雇用や無期雇用などの選択肢がある。
- 待遇に疑問があれば、派遣会社に説明を求める権利がある。
働き方改革は、派遣社員であるあなたを守り、キャリアアップを後押しするための重要なルールです。この記事を参考に、ご自身の権利を正しく理解し、派遣会社とも適切にコミュニケーションを取りながら、納得のいく働き方を実現してください。
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