職場のハラスメント全種類一覧|定義と意味、具体例を解説

「上司のこの言い方、もしかしてパワハラ…?」
「同僚からのプライベートな質問が不快だけど、これってセクハラになるの?」

職場で働く中で、相手の言動に不快感や疑問を抱いた経験はありませんか。もしかしたら、それは「ハラスメント」かもしれません。

ハラスメントは、働く人の尊厳や人権を傷つけ、職場の環境を悪化させる深刻な問題です。しかし、どのような行為がハラスメントにあたるのか、その定義や種類を正確に知っている人は少ないかもしれません。

この記事では、職場で起こりうるハラスメントについて、その定義から具体的な種類、そして万が一被害に遭ってしまった場合の対処法まで、網羅的に分かりやすく解説します。

この記事を読めば、ご自身の状況を客観的に判断し、次の一歩を踏み出すための知識が身につきます。一人で悩まず、まずは正しい知識を得ることから始めましょう。

ハラスメントの定義とは

職場で「ハラスメント」という言葉を耳にする機会は増えましたが、その正確な意味を理解しておくことが重要です。ここでは、ハラスメントの基本的な定義と、正当な業務指導との違いについて解説します。

厚生労働省が示すハラスメントの意味

ハラスメントとは、一般的に「いじめ」や「嫌がらせ」を意味する言葉です。

職場におけるハラスメントは、性別、年齢、職位などの様々な背景から、相手に不快感や不利益を与え、働く環境を悪化させるあらゆる言動を指します。

厚生労働省は、職場のハラスメント対策を推進しており、特にパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、マタニティハラスメントについては法律で企業の防止措置を義務付けています。働くすべての人が安心して能力を発揮できる環境を守るため、ハラスメントは決して許されない行為とされています。

(参考:厚生労働省 あかるい職場応援団 https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/

業務上の正当な指導との違い

上司からの指導が厳しいと感じたとき、「これはハラスメントではないか?」と悩むことがあるかもしれません。しかし、業務上必要な指導とハラスメントは明確に区別されます。

その判断基準は、主に以下の3つのポイントで考えられます。

  • 業務上の必要性
    その言動に業務上の必要性があるか。企業の目的達成や、部下の育成といった正当な目的があるかどうかが問われます。
  • 言動の目的
    その言動が、労働者の能力向上や業務改善を目的としているか。個人的な感情や嫌がらせが目的の場合は、ハラスメントと判断される可能性が高まります。
  • 言動の態様・手段
    社会通念に照らして、その言動が許される範囲内か。人格を否定するような暴言や、必要以上の叱責は、指導の範囲を逸脱していると見なされます。

この3つのポイントを総合的に見て、業務上の必要性がなく、労働者に精神的・身体的な苦痛を与えるものはハラスメントと判断されます。

ハラスメントに該当しない行為の例

一方で、以下のようなケースは、労働者に多少の不快感が生じたとしても、原則としてハラスメントには該当しません。

  • 遅刻や規律違反を理由に、相当な範囲で注意を行うこと
  • 企業の経営方針に基づき、労働者の能力や経験に応じて業務上の指示や命令を出すこと
  • 労働者の能力不足や成績不良を理由に、客観的で合理的な範囲で指導や教育を行うこと

重要なのは、その言動が業務上の正当な目的を持ち、社会通念上、相当な範囲で行われているかという点です。

職場のハラスメント種類一覧

職場におけるハラスメントは、パワーハラスメント(パワハラ)やセクシュアルハラスメント(セクハラ)だけではありません。ここでは、代表的なハラスメントの種類を一覧でご紹介します。

パワーハラスメント(パワハラ)

職務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり、職場環境を悪化させたりする行為です。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否したことで解雇、降格、減給などの不利益を受けたり、職場環境が不快なものとなったりする行為です。

マタニティハラスメント(マタハラ)

妊娠・出産、育児休業などの利用に関する、上司・同僚からの嫌がらせを指します。不利益な取り扱いや、制度利用を阻害する言動などが該当します。

モラルハラスメント(モラハラ)

言葉や態度、身振りなどによって、相手の人格や尊厳を傷つけ、精神的に追い詰める行為です。明確な暴力や暴言がなくても、無視や仲間外れなども含まれます。

ジェンダーハラスメント

「男だから」「女だから」といった性別による固定観念や役割分担を押し付ける言動です。性的な意図がなくても、性別を理由に個人の能力発揮を妨げる行為が該当します。

その他のハラスメントの種類

上記以外にも、職場では様々なハラスメントが問題となっています。

  • ケアハラスメント(ケアハラ)
    家族の介護を行う労働者に対して、制度利用を妨げたり、嫌がらせをしたりする行為。
  • テクノロジーハラスメント(テクハラ)
    パソコンやITツールが苦手な人に対して嫌がらせをしたり、逆にITツールを利用して過剰な監視を行ったりする行為。
  • 時短ハラスメント(ジタハラ)
    具体的な業務改善策を示さずに「早く帰れ」とだけ指示し、労働者に過度なプレッシャーを与える行為。
  • アルコールハラスメント(アルハラ)
    飲酒の強要や、飲めない人への配慮を欠く言動、酔って迷惑をかける行為など。

パワーハラスメント(パワハラ)の定義

職場のハラスメントの中でも特に問題となることが多い「パワーハラスメント(パワハラ)」。その定義は法律で明確に定められています。

法律で定められた3つの要素

2020年6月に施行された「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」では、職場のパワーハラスメントは以下の3つの要素をすべて満たすものと定義されています。

  • 優越的な関係を背景とした言動
    職務上の地位が上の者から下の者へ、というだけでなく、専門知識や経験、人間関係など、様々な優位性が背景となり得ます。
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
    社会通念に照らし、その言動が明らかに業務上の必要性がない、またはそのやり方が不適切である場合を指します。
  • 労働者の就業環境が害されるもの
    その言動により、労働者が身体的または精神的に苦痛を感じ、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、仕事をする上で看過できない程度の支障が生じることを指します。

この3つの要素をすべて満たす場合、法律上のパワーハラスメントに該当します。

代表的な6つの行為類型

厚生労働省は、パワハラの代表的な言動を以下の6つの類型に分類しています。ご自身の状況がどれかに当てはまらないか、確認してみましょう。

◎身体的な攻撃

殴る、蹴るなどの暴行や、物を投げつけるといった行為です。

  • 具体例
    • 胸ぐらをつかんで説教する。
    • 書類で頭を叩く。
    • 相手に物を投げつける。

◎精神的な攻撃

人格を否定するような発言や、脅迫、名誉毀損、侮辱などが含まれます。

  • 具体例
    • 「給料泥棒」「役立たず」などと罵倒する。
    • 他の従業員の前で、大声で威圧的な叱責を繰り返す。
    • 相手の性的指向や病歴などを本人の許可なく暴露する。

◎人間関係からの切り離し

特定の従業員を意図的に無視したり、仲間外れにしたり、別室に隔離したりする行為です。

  • 具体例
    • 自分の気に入らない従業員を、仕事から外し、長期間にわたり無視する。
    • 会議や打ち合わせに意図的に参加させない。
    • 社内イベントに一人だけ声をかけない。

◎過大な要求

業務上明らかに不要なことや、遂行不可能な業務を強制する行為です。

  • 具体例
    • 新入社員に必要な教育を行わないまま、到底対応できないレベルの目標を課す。
    • 業務とは関係のない私的な雑用を強制的にやらせる。
    • 休日や深夜に、緊急性のない業務の対応を強いる。

◎過小な要求

本人の能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えなかったりする行為です。

  • 具体例
    • 営業職として採用した社員に、理由なく一日中シュレッダー作業だけをさせる。
    • 気に入らないという理由で、誰にでもできるような雑務しか与えない。
    • 意図的に仕事を与えず、孤立させる。

◎個の侵害

プライベートな事柄に過度に立ち入ることです。

  • 具体例
    • 恋人の有無や交際状況について、執拗に尋ねる。
    • 本人の同意なく、個人情報を他の従業員に言いふらす。
    • 休日の過ごし方を細かく監視し、報告を強要する。

パワハラ防止法の概要

パワハラ防止法とは、企業に対して職場のパワーハラスメント防止措置を講じることを義務付けた法律です。大企業では2020年6月から、中小企業でも2022年4月から全面的に義務化されています。

この法律により、企業は以下の対応を取る必要があります。

  • パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、従業員に周知・啓発すること
  • 相談窓口を設置し、労働者が相談しやすい体制を整備すること
  • パワハラの相談があった場合に、迅速かつ適切に対応すること
  • 相談者のプライバシーを保護し、相談したことを理由に不利益な取り扱いをしないこと

会社には、ハラスメントのない職場環境を整備する責任があることを覚えておきましょう。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)の定義

セクシュアルハラスメント(セクハラ)は、男女雇用機会均等法で定義されており、大きく「対価型」と「環境型」の2つに分けられます。

対価型セクシュアルハラスメント

対価型セクハラとは、労働者の意に反する性的な言動に対して、拒否や抵抗をしたことを理由に、解雇、降格、減給、異動といった労働条件上の不利益を与えることです。

  • 具体例
    • 上司が部下に対し、性的な関係を要求し、拒否されたため不当な人事評価を行う。
    • 出張中のホテルで部屋に来るよう誘い、断った相手をプロジェクトから外す。

環境型セクシュアルハラスメント

環境型セクハラとは、性的な言動によって職場の環境が不快なものとなり、労働者の能力発揮に重大な悪影響が生じることです。

このタイプは、必ずしも不利益な取り扱いを伴わなくても成立します。

  • 具体例
    • 職場で性的な冗談や噂話を頻繁に聞かされ、苦痛に感じて仕事に集中できない。
    • ヌードポスターなどを職場に掲示し、不快な環境を作り出している。
    • 身体に不必要に触れる同僚がいて、出社するのが苦痛になっている。

セクハラの具体的な言動例

セクハラに該当する言動は多岐にわたります。以下に具体例を挙げます。

  • 性的な内容の発言
    • 容姿や身体的特徴について、執拗に評価したりからかったりする。
    • 性的な経験やプライベートについて、しつこく尋ねる。
    • 「彼氏(彼女)はいるの?」など、恋愛関係に関する不必要な質問。
  • 性的な行動
    • 食事やデートにしつこく誘う。
    • 不必要に身体に触る、肩を抱く、腰に手を回す。
    • わいせつな画像をメールで送ったり、職場で見せたりする。

重要なのは、言動の受け手が「不快に感じるかどうか」です。たとえ相手にそのつもりがなくても、受け手が不快に感じればセクハラに該当する可能性があります。

その他の主な職場ハラスメント

パワハラやセクハラ以外にも、注意すべきハラスメントは数多く存在します。ここでは、代表的なものをいくつか紹介します。

マタニティ・パタニティハラスメント

マタニティハラスメント(マタハラ)パタニティハラスメント(パタハラ)は、妊娠・出産、育児休業・介護休業などの制度利用を理由とした嫌がらせや不利益な取り扱いです。

  • 具体例
    • 妊娠を報告した女性社員に「迷惑だ」「辞めたらどうか」などと発言する。
    • 育児休業の取得を申請した男性社員に対し、昇進させないなどの不利益な扱いを示唆する。
    • 時短勤務をしている社員に「他の人はもっと働いている」と嫌味を言う。

これらのハラスメントは、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法で禁止されています。

モラルハラスメントの具体例

モラルハラスメント(モラハラ)は、言葉や態度によって相手の心をじわじわと傷つける精神的な暴力です。パワハラと重なる部分も多いですが、職場の優位性に関係なく、同僚間や部下から上司へ行われることもあります。

  • 具体例
    • 挨拶をしても無視し続ける。
    • 本人がいる前で、わざと聞こえるように悪口や噂話をする。
    • 仕事でミスをするたびに、能力や人格を否定するような発言を繰り返す。
    • 実現不可能な要求を突きつけ、失敗を執拗に責める。

目に見える証拠が残りにくいため、被害者が一人で抱え込みやすいという特徴があります。

ケアハラスメント

ケアハラスメント(ケアハラ)は、家族の介護を理由とした嫌がらせや不利益な取り扱いです。介護のために時短勤務や休暇を取得しようとする労働者に対して、否定的な言動や制度利用を妨害する行為が該当します。

テクノロジーハラスメント

テクノロジーハラスメント(テクハラ)は、ITスキルに関する嫌がらせです。パソコン操作が苦手な人を見下したり、わざと専門用語を使って困らせたりする行為がこれにあたります。逆に、オンラインツールを使って部下の行動を過剰に監視したり、勤務時間外に連絡を繰り返したりすることもテクハラの一種です。

ハラスメントを受けた場合の対処法と相談先

もしあなたが職場でハラスメントを受けていると感じたら、一人で抱え込まずに行動することが大切です。ここでは、具体的な対処法と相談先を紹介します。

証拠を記録する

ハラスメントの事実を客観的に示すための証拠は、非常に重要です。 感情的にならず、冷静に記録を残しましょう。

  • 何を記録するか
    • 日時: いつ、何月何日の何時ごろか。
    • 場所: どこで、会議室や自席など。
    • 加害者: 誰から、氏名や役職。
    • 言動: 何を言われたか、何をされたか(具体的に)。
    • 目撃者: 周囲に誰がいたか。
    • 自分の気持ち: その時どう感じたか、どのような影響があったか。
  • 記録の方法
    • メモや日記: 手書きでもPCでも構いません。時系列で詳細に記録します。
    • メールやチャット: ハラスメントに該当する内容のメールやチャットは、消さずに保存・印刷しておきましょう。
    • 録音: 相手との会話を録音することも有効な手段です。ただし、無断録音の扱いは状況によるため、専門家への相談も検討しましょう。

社内の相談窓口に相談する

多くの企業では、パワハラ防止法に基づき、ハラスメントに関する相談窓口を設置しています。まずは社内の窓口に相談することを検討してみましょう。

  • 相談窓口の例
    • 人事部、総務部
    • コンプライアンス部門
    • 社内に設置された専門の相談室
    • 信頼できる上司や先輩

会社には、相談者のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしない義務があります。 安心して相談できる体制が整っているはずです。

社外の公的な相談窓口一覧

「社内の人には相談しにくい」「会社に相談しても解決しなかった」という場合は、社外の公的な機関に相談することができます。無料で相談できる窓口も多くあります。

◎総合労働相談コーナー

各都道府県の労働局や労働基準監督署内に設置されており、解雇、賃金、ハラスメントなど、あらゆる分野の労働問題について専門の相談員が対応してくれます。予約不要・無料で、電話または面談で相談が可能です。

(参考:厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内 https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

◎みんなの人権110番

法務省が運営する相談電話で、いじめやハラスメントなど、様々な人権問題に関する相談を受け付けています。法務局の職員や人権擁護委員が対応し、必要に応じて調査や救済手続きを行ってくれる場合もあります。

(参考:法務省 みんなの人権110番 https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken110.html

◎法テラス

国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所です。経済的な理由で弁護士への相談が難しい場合でも、無料で法律相談を受けられる制度(民事法律扶助)があります。 ハラスメント問題で法的な対応を検討している場合に頼りになります。

(参考:法テラス 公式ホームページ https://www.houterasu.or.jp/

まとめ

この記事では、職場のハラスメントについて、その定義から種類、具体的な対処法までを解説しました。

  • ハラスメントは「嫌がらせ」であり、働く人の尊厳を傷つける許されない行為
  • パワハラ、セクハラ、マタハラなど、職場には様々な種類のハラスメントが存在する
  • 業務上の正当な指導とは明確な違いがある
  • ハラスメントを受けたら、一人で悩まずに証拠を記録し、信頼できる窓口に相談することが重要

「これくらいで相談していいのだろうか?」とためらう必要はありません。あなたが不快に感じ、仕事に支障が出ているのであれば、それは解決すべき問題です。

この記事が、あなたが自分を守り、安心して働ける環境を取り戻すための一助となれば幸いです。まずは勇気を出して、信頼できる誰かに話すことから始めてみてください。

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