
「派遣で働き始めたけど、有給休暇はいつからもらえるの?」
「今の契約が終わる前に、有給を使い切りたいけどどうすればいい?」
「派遣社員でも、ちゃんと有給は取れるのかな…?」
派遣社員として働いていると、有給休暇に関する疑問や不安が出てきますよね。正社員とは少しルールが違うため、戸惑う方も多いのではないでしょうか。
しかし、ご安心ください。派遣社員にも、法律で定められた有給休暇を取得する権利がしっかりとあります。
この記事では、派遣社員の有給休暇について、専門家が以下の点を分かりやすく解説します。
- 有給休暇がいつから・何日もらえるのか
- 有給休暇が付与される基本的なルール
- 正しい申請方法と取り方の流れ
- 契約満了時の有給消化のポイント
- 法律で定められた年5日の取得義務
- よくあるトラブルと対処法
この記事を読めば、派遣社員の有給休暇に関するルールを正しく理解し、安心して休暇を取得できるようになります。

派遣の有給休暇はいつから何日もらえる?

まず、派遣社員が有給休暇を「いつから」「何日」もらえるのか、基本的なルールから見ていきましょう。
結論から言うと、有給休暇は勤務開始から6ヶ月後に付与され、日数は週の労働日数や勤続期間によって決まります。
勤続期間ごとの有給休暇付与日数一覧
有給休暇の付与日数は、勤続期間が長くなるほど増えていきます。週5日以上勤務している場合の一般的な付与日数は以下の通りです。
| 勤続期間 | 付与日数 |
|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日 |
このように、法律で定められた日数がきちんと付与されます。
有給付与のタイミングは勤務開始半年後
有給休暇が初めて付与されるタイミングは、働き始めてから継続して6ヶ月が経過した時点です。
例えば、4月1日に勤務を開始した場合、最初の有給休暇は10月1日に付与されます。その後は、1年ごとに(1年6ヶ月後、2年6ヶ月後…)新たな有給休暇が付与されていく仕組みです。
週の労働日数に応じた付与日数(比例付与)
週の勤務日数が少ないパートタイムの派遣社員の場合でも、有給休暇は付与されます。この場合、「比例付与」という仕組みが適用されます。
比例付与とは、週の所定労働日数や年間の所定労働日数に応じて、有給休暇の付与日数が調整される制度のことです。
週の所定労働日数ごとの付与日数は以下の通りです。
| 勤続期間 | 週4日 | 週3日 | 週2日 | 週1日 |
|---|---|---|---|---|
| 6ヶ月 | 7日 | 5日 | 3日 | 1日 |
| 1年6ヶ月 | 8日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 2年6ヶ月 | 9日 | 6日 | 4日 | 2日 |
| 3年6ヶ月 | 10日 | 8日 | 5日 | 2日 |
| 4年6ヶ月 | 12日 | 9日 | 6日 | 3日 |
| 5年6ヶ月 | 13日 | 10日 | 6日 | 3日 |
| 6年6ヶ月以上 | 15日 | 11日 | 7日 | 3日 |
(参考:厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」)
このように、自分の働き方に合わせて有給休暇が付与されるので、週の勤務日数が少なくても安心してください。
派遣の有給休暇が付与される基本ルール

次に、派遣社員の有給休暇を理解する上で最も重要な「誰から」「どのような条件で」付与されるのかという基本ルールを解説します。
ポイントは、有給休暇は派遣会社(派遣元)から付与され、「6ヶ月以上の継続勤務」と「全労働日の8割以上の出勤」という2つの条件を満たす必要があるという点です。
有給を付与するのは派遣会社(派遣元)
派遣社員の有給休暇について、最も大切なポイントはこれです。
派遣社員の雇用主は、実際に働く派遣先企業ではなく、登録している派遣会社(派遣元)です。そのため、給与の支払いや社会保険の手続きと同様に、有給休暇の付与や管理もすべて派遣会社が行います。
この「雇用主は派遣会社」という点を覚えておくと、申請先や相談先で迷うことがなくなります。
条件1:6ヶ月以上の継続勤務
有給休暇が付与されるためには、同じ派遣会社との雇用契約が、通算で6ヶ月以上継続している必要があります。
ここで重要なのは、「同じ派遣会社で」という点です。
例えば、A社での派遣契約(3ヶ月)が終了した後、すぐに同じ派遣会社からB社での派遣契約(3ヶ月)が始まった場合、派遣先が変わっても勤続期間は通算されます。この場合、合計6ヶ月の継続勤務となるため、有給休暇の付与対象となります。
条件2:全労働日の8割以上の出勤
もう一つの条件は、有給休暇が付与されるまでの期間(最初の6ヶ月間など)において、契約上の全労働日の8割以上出勤していることです。
「全労働日」とは、雇用契約で定められた働くべき日数のことを指します。
例えば、最初の6ヶ月間の全労働日が120日だった場合、その8割である96日以上出勤していれば、この条件をクリアできます。ほとんどの場合、真面目に勤務していれば問題なく満たせる条件です。
有給休暇の申請方法と取り方の流れ

有給休暇の権利があることは分かったけれど、実際にどうやって申請すればいいのでしょうか。
円満に休暇を取得するためには、正しい手順を踏むことが大切です。有給休暇の申請は派遣会社に行い、事前に派遣先にも共有して業務調整するのがスムーズな流れです。
申請先は派遣先ではなく派遣会社
繰り返しになりますが、有給休暇の申請先は、実際に働いている職場の上司(派遣先)ではなく、雇用主である派遣会社です。必ず派遣元の担当営業へ、メール・電話等で事前の申請が必要となっています。
基本的な申請の流れ
- 派遣先の責任者に相談
まずは、派遣先の指揮命令者(直属の上司など)に「〇月〇日に有給休暇をいただきたいのですが、よろしいでしょうか?」と口頭で相談し、業務に支障がないか確認します。 - 派遣会社へ正式に申請
派遣先の了承を得たら、派遣会社の担当者へ連絡し、正式に有給休暇の申請手続きを行います。 - 業務の引継ぎ
休む間の業務に支障が出ないよう、必要な引継ぎや情報共有をしっかりと行います。
この流れで進めることで、派遣先との関係も良好に保ちながら、スムーズに休暇を取得できます。
派遣先への事前共有と業務調整
法律上、有給休暇の取得に理由は必要なく、労働者の権利として自由に取得できます。しかし、社会人としてのマナーとして、派遣先の指揮命令者(上司)にも早めに相談しておくことが、トラブルを防ぐ上で非常に重要です。
あなたが休むことで、他のメンバーの業務に影響が出る可能性もあります。周囲への配慮を忘れず、業務の引継ぎやスケジュール調整をしっかり行うことで、気持ちよく休暇を楽しみましょう。
有給休暇の有効期限は2年間
付与された有給休暇には有効期限があります。
労働基準法により、有給休暇の有効期限は2年間と定められています。この期間を過ぎると、権利は時効によって消滅してしまいます。
例えば、2023年10月1日に付与された10日間の有給休暇は、2025年9月30日まで有効です。使い切れなかった有給休暇は翌年に繰り越せますが、消滅してしまわないよう、計画的に消化することを心がけましょう。

契約満了・終了時の有給消化はどうなる?

「今の派遣契約がもうすぐ終わるけど、有給が残っている…」これは派遣社員なら誰もが気になるポイントです。
契約満了時に残った有給休暇は、契約期間中に消化するのが原則です。また、次の契約まで1ヶ月以上空いてしまうと、せっかくの有給休暇がリセットされてしまう可能性があるので注意が必要です。(1ヶ月以上空いてしまうと退職となることが多いため)
契約期間中にすべて消化するのが原則
残っている有給休暇は、現在の派遣契約が終了するまでに使い切るのが基本です。
契約更新の予定がない場合や、次の仕事が決まっていない場合は、最終出勤日までに残りの有給を消化できないか、早めに派遣会社の担当者と派遣先に相談しましょう。
例えば、契約最終月の後半をまとめて有給消化にあてる、といった調整ができる場合もあります。権利を無駄にしないためにも、早めの相談が鍵となります。
次の契約まで1ヶ月空くとリセットされる
同じ派遣会社で次の仕事を探す場合でも、注意が必要です。
派遣契約がない期間(空白期間)が1ヶ月を超えてしまうと、継続勤務と見なされなくなり、勤続期間がリセットされてしまいます。その結果、それまで保有していた有給休暇の権利も消滅してしまうのが一般的です。
有給休暇の権利や付与日数を引き継ぎたい場合は、空白期間が1ヶ月未満になるように次の仕事を見つける必要があります。
有給休暇の買取は原則できない

「使わなかった有給を、お金で買い取ってもらえないの?」と考える方もいるかもしれませんが、労働基準法では、有給休暇の買取は原則として認められていません。
有給休暇は、心身のリフレッシュを目的とした「休むための権利」だからです。
ただし、法律で定められた日数を超える会社独自の休暇や、退職時にどうしても消化しきれなかった有給休暇について、例外的に会社が任意で買い取るケースもあります。しかし、これは会社の義務ではないため、基本的には「消化するもの」と考えておきましょう。
年5日の有給休暇取得義務は派遣も対象

2019年4月から、すべての企業で「年5日の年次有給休暇の取得」が義務化されました。このルールについて、詳しく見ていきましょう。
結論として、この年5日の有給休暇取得義務は、派遣社員も対象です。
派遣社員にも適用される法律上の義務
「年次有給休暇」とは、法律で定められた労働者の大切な権利です。
新しい法律では、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、会社(派遣社員の場合は派遣会社)は、付与した日から1年以内に5日分の有給休暇を取得させなければならないと定められています。
これは正社員や契約社員だけでなく、派遣社員やパート・アルバイトにも例外なく適用されます。もし派遣会社がこの義務を怠った場合、法律違反となります。
(参考:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」)
取得時季は派遣会社が指定する場合も
もし、派遣社員が自ら希望して有給休暇を5日以上取得していない場合、派遣会社が「〇月〇日に有給休暇を取得してください」と時季(取得日)を指定して休ませることがあります。これを「時季指定」と呼びます。
もちろん、派遣会社が一方的に決めるわけではなく、事前に労働者であるあなたの意見を聴取し、できる限り希望に沿うように配慮することが求められています。
派遣の有給休暇に関するよくある質問

最後に、派遣社員の有給休暇に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
派遣先に有給取得を拒否されたら?
A. まずは、すぐに派遣会社の担当者に相談しましょう。
有給休暇の取得は労働者の正当な権利であり、派遣先がそれを拒否することは基本的にできません。
業務が著しく滞る場合に、会社が取得日を変更してもらう「時季変更権」という権利がありますが、この権利を持つのは雇用主である派遣会社のみです。派遣先には時季変更権はありません。
「忙しいから」という理由で派遣先に取得を断られた場合は、一人で悩まず、必ず派遣会社に報告・相談してください。
派遣会社ごとのルールの違い
A. 基本的なルールは法律で同じですが、細かい運用は異なります。
有給休暇の付与日数や取得義務といった基本的なルールは、どの派遣会社でも労働基準法に則っているため同じです。
しかし、以下のような点で会社ごとの違いが出ることがあります。
- 申請方法
勤怠管理システム、メール、電話など。 - 半休の有無
会社独自の制度として導入している場合利用可能。 - 特別休暇
法定の有給休暇とは別に、慶弔休暇やリフレッシュ休暇などを設けているか。
トラブルが起きた時の相談先
A. まずは派遣会社の担当者に相談するのが第一歩です。それでも解決しない場合は、公的な窓口に相談しましょう。
有給休暇に関するトラブルや疑問があった場合、まずは雇用主である派遣会社の担当者に相談するのが基本です。
もし、派遣会社に相談しても対応してくれない、あるいは納得のいく解決ができない場合は、以下の公的な専門機関に相談することができます。
- 総合労働相談コーナー
各都道府県の労働局や労働基準監督署内に設置されており、無料で専門の相談員に相談できます。 - 労働基準監督署
法律違反が疑われる場合に、調査や指導を行ってくれる行政機関です。 - 法テラス(日本司法支援センター)
経済的な理由で弁護士への相談が難しい場合に、無料の法律相談などの支援を受けられます。
まとめ

今回は、派遣社員の有給休暇について、付与条件から申請方法、トラブル対処法まで詳しく解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 有給休暇は派遣会社(派遣元)から付与される
- 付与条件は「6ヶ月以上の継続勤務」と「全労働日の8割以上の出勤」
- 付与日数は勤続期間と週の労働日数で決まる
- 申請は派遣会社へ、事前の相談・共有は派遣先へ行うのがスムーズ
- 年10日以上付与される場合、年5日の取得は法律上の義務
- 契約満了時は、期間内に消化するのが原則
- トラブル時は一人で悩まず、派遣会社や公的機関に相談する
有給休暇は、頑張って働くあなたに与えられた大切な権利です。ルールを正しく理解し、計画的に活用して、心身ともにリフレッシュしてください。この記事が、あなたの派遣ライフをより充実させる一助となれば幸いです。
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