派遣の社会保険は出たり入ったりできる?週20時間の壁を徹底解説

「今月はシフトにたくさん入ったから、社会保険に加入しなきゃいけないかも…」
「扶養内で働きたいのに、勤務時間が超えたり超えなかったりして不安…」

派遣社員として働く方の中には、月々の勤務時間の変動によって、社会保険の加入について悩んでいる方も多いのではないでしょうか。特に「週20時間の壁」は、働き方を左右する大きなポイントですよね。

この記事では、派遣社員の社会保険について、多くの人が疑問に思う「出たり入ったり」は可能なのか、そして「週20時間」の正しい考え方について、専門家が分かりやすく解説します。

この記事を読めば、社会保険のルールを正しく理解し、ご自身の希望に合った働き方を計画できるようになります。

結論「出たり入ったり」は原則不可

まず結論からお伝えすると、本人の意思で社会保険に加入したり、やめたりを繰り返す「出たり入ったり」は原則としてできません。

なぜなら、社会保険の加入資格は、その月の気分や一時的な労働時間で決まるものではないからです。

社会保険の加入・喪失は契約内容で決まる

社会保険に加入するかどうかの最も重要な判断基準は、派遣会社と結んでいる「雇用契約書」の内容です。

具体的には、契約書に記載されている「週の所定労働時間」や「契約期間」が、法律で定められた加入条件を満たしているかどうかで機械的に決まります。その月の実労働時間がたまたま増えたり減ったりしたからといって、すぐに加入・喪失となるわけではありません。

一度加入したら契約変更まで資格は継続

一度、社会保険の加入条件を満たして資格を取得すると、その後の契約内容が変更されない限り、資格は継続されます。

例えば、契約上は週20時間以上の勤務なのに、閑散期で一時的に勤務時間が週20時間を下回ったとしても、社会保険の資格を喪失することはありません。資格を喪失するのは、あくまで契約更新などのタイミングで、加入条件を満たさない内容に契約が変更された場合です。

派遣社員の社会保険加入条件5つ

では、具体的にどのような条件を満たすと社会保険への加入義務が発生するのでしょうか。特にパート・アルバイトのような短時間労働者の場合、以下の5つの条件をすべて満たす必要があります。

1.週の所定労働時間が20時間以上

「所定労働時間」とは、雇用契約で定められた、残業を含まない正規の労働時間のことです。1週間の所定労働時間が20時間以上であることが最初の条件です。

2.月額賃金が8.8万円以上

契約上の月額賃金が8.8万円(年収約106万円)以上である必要があります。この賃金には、残業代、賞与、交通費などは含まれません。

3.雇用期間が2ヶ月を超える見込み

雇用契約の期間が2ヶ月を超えて見込まれる場合に加入対象となります。たとえ契約期間が「2ヶ月」とされていても、契約書に「更新する場合がある」といった記載があったり、同様の契約で更新された実績があったりすれば、この条件に該当します。

4.学生ではない

原則として学生は加入対象外です。ただし、夜間大学や通信制の学生、休学中の場合は加入対象となることがあります。

5.従業員数51人以上の企業に勤務

勤務先(派遣社員の場合は派遣元の会社)の従業員数が51人以上であることが条件です。
(参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構

「週20時間の壁」超えたり超えなかったりする場合

ここが最も気になるポイントだと思います。月によって勤務時間が変動し、「週20時間」を超えたり超えなかったりする場合は、どのように判断されるのでしょうか。

週20時間は雇用契約書で判断される

繰り返しになりますが、最も重要なのは実労働時間ではなく、雇用契約書に記載された「週の所定労働時間」です。

例えば、契約書に「週の所定労働時間:18時間」と明記されていれば、基本的に社会保険の加入義務は発生しません。

一時的な残業で超えても加入にはならない

「契約上は週18時間だけど、今月は忙しくて残業が増え、結果的に週平均25時間働いてしまった…」というケースを考えてみましょう。

この場合、一時的な残業によって実労働時間が週20時間を超えたとしても、契約上の所定労働時間が20時間未満であれば、社会保険の加入義務は発生しません。 あくまで判断の基準は契約内容です。

月ごとに勤務時間が変動する場合の判断基準

シフト制などで、契約上も月によって勤務時間が変動する場合はどうでしょうか。

この場合も、契約全体を見て「常態的に週20時間以上」となるかどうかで判断されます。例えば、1ヶ月単位の変形労働時間制で、月平均の所定労働時間が週20時間以上になるように契約が結ばれていれば、加入対象となります。

判断が難しい場合は、ご自身の雇用契約書を確認し、派遣会社の担当者に「この契約内容は社会保険の加入対象になりますか?」と直接確認するのが最も確実です。

契約更新時に労働条件を見直す

もし現在の働き方を変えたい(社会保険に加入したい、あるいは加入を避けたい)のであれば、契約更新のタイミングが最も重要な機会となります。

次の契約から労働時間を変更したい旨を、事前に派遣会社の担当者に相談しましょう。担当者はあなたの希望を踏まえて、次の契約内容を調整したり、希望に合った別の派遣先を探してくれたりします。

社会保険に加入しないための働き方

意図せず社会保険に加入して手取りが減るのを避けたい、扶養内で働き続けたいという場合は、以下の方法を検討しましょう。

  • 契約時間を週20時間未満に調整する
    これが最も確実な方法です。派遣会社に「週20時間未満の契約」を希望していることを明確に伝え、その条件に合った仕事を紹介してもらいましょう。
  • 月額賃金を8.8万円未満に抑える
    時給が高い仕事の場合、週20時間未満でも月額賃金が8.8万円を超えてしまう可能性があります。時給と労働時間のバランスを考えて、月額賃金が8.8万円未満になるように調整しましょう。
  • 雇用期間2ヶ月以内の短期派遣を選ぶ
    更新の可能性がない、2ヶ月以内の短期・単発の仕事を選ぶのも一つの方法です。ただし、前述の通り、更新が見込まれる場合は加入対象となるため注意が必要です。
  • 派遣会社に加入を希望しない旨を伝える
    何よりも、ご自身の働き方の希望を派遣会社に正直に伝えておくことが大切です。そうすることで、ミスマッチを防ぎ、安心して働くことができます。

加入のメリット・デメリットを比較

社会保険への加入は、手取りが減るというデメリットばかりではありません。長期的な視点で見ると、多くのメリットもあります。両方を比較して、ご自身にとってどちらが良いか考えてみましょう。

【メリット】 将来の年金増額と医療保険料の軽減

  • 将来の年金が増える
    国民年金に加えて厚生年金にも加入するため、将来受け取れる年金額が大幅に増えます。
  • 手厚い医療保険が受けられる
    病気やケガで長期間働けなくなった場合に給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」や、産休中に支給される「出産手当金」など、国民健康保険にはない手厚い保障が受けられます。
  • 保険料の半分を会社が負担してくれる
    社会保険料は、ご自身と会社が半分ずつ負担します。全額自己負担の国民年金・国民健康保険と比べると、実質的な負担は軽くなります。

【デメリット】 社会保険料負担による手取り額の減少

社会保険に加入する最大のデメリットは、保険料が給与から天引きされるため、毎月の手取り額が減ってしまうことです。扶養内で働くことを希望している方や、現在の生活費を最優先したい方にとっては、大きな問題と感じるかもしれません。

手取り額シミュレーション 月収10万円の場合

仮に、時給1,250円で週20時間(月80時間)働き、月収が10万円になった場合を考えてみましょう。

社会保険に加入すると、健康保険料と厚生年金保険料、雇用保険料を合わせて約15,000円が給与から天引きされます。

その結果、手取り額は約85,000円となります。
※保険料率は地域や年度によって変動するため、あくまで目安です。

このように、月収の約15%が保険料として引かれることを念頭に置いておきましょう。

派遣の社会保険に関するQ&A

最後に、派遣社員の方が抱きがちな社会保険に関する疑問にお答えします。

交通費や残業代は月額賃金に含まれる?

いいえ、原則として含まれません。
月額賃金8.8万円を計算する際には、以下のものは除外されます。

  • 通勤手当(交通費)
  • 残業代(時間外労働、休日労働、深夜労働に対する手当)
  • 賞与(ボーナス)
  • 臨時的に支払われる賃金(結婚手当など)

2ヶ月更新の契約を繰り返す場合は?

「当初の雇用期間が2ヶ月以内でも、契約を更新する可能性がある場合は、最初の契約から加入対象となる」のがルールです。
例えば、契約書に「契約を更新する場合がある」と記載されていたり、その派遣会社で同じ仕事の契約が更新された実績があったりすれば、「2ヶ月を超える見込み」と判断され、働き始めた初日から加入義務が発生します。

会社が社会保険に加入させてくれない時の対処法

加入条件をすべて満たしているにもかかわらず、派遣会社が社会保険に加入させてくれないのは違法です。
まずは派遣会社の担当者に、加入条件を満たしているはずだと伝え、確認を求めましょう。それでも適切な対応がされない場合は、お近くの年金事務所労働基準監督署に相談することができます。

扶養から外れるタイミングはいつ?

社会保険の加入条件を満たした日(資格取得日)から、配偶者の社会保険の扶養から外れる手続きが必要になります。
ご自身の社会保険に加入したら、速やかに配偶者の勤務先へ申し出て、扶養を抜ける手続きを行ってください。これは、年収130万円の壁(税法上の扶養とは異なる「社会保険上の扶養」)とは別の話なので、混同しないように注意しましょう。

まとめ

今回は、派遣社員の社会保険について、「出たり入ったり」はできるのか、そして「週20時間の壁」の考え方を中心に解説しました。

最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。

  • 社会保険の「出たり入ったり」は原則できない
  • 加入の判断基準は、実労働時間ではなく「雇用契約書」の内容
  • 「週20時間」は、残業を含まない「所定労働時間」で判断される
  • 一時的な残業で週20時間を超えても、すぐに加入対象にはならない
  • 働き方を変えたいなら、契約更新のタイミングで派遣会社に相談することが重要

社会保険は、手取りが減るという側面だけでなく、将来の安心につながるという大きなメリットもあります。ご自身のライフプランや将来設計に合わせて、どのような働き方がベストなのかを考えるきっかけにしてみてください。

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