「派遣社員として働いているけど、健康診断ってどうなるの？」「費用は自己負担？」「もし受けなかったら、契約更新に影響はある？」
派遣という働き方を選ぶ中で、健康診断に関する疑問や不安を感じている方は少なくありません。正社員とは異なるルールに戸惑うこともあるでしょう。
この記事では、派遣社員の健康診断について、専門家が分かりやすく徹底解説します。受診義務の有無や費用負担、具体的な手続きの流れから、会社の対応まで、あなたの知りたい情報を網羅しました。
この記事を読めば、派遣の健康診断に関する不安はすべて解消され、安心して日々の業務に取り組めるようになります。
派遣社員の健康診断は義務で費用は会社負担
まず結論からお伝えします。条件を満たす派遣社員の健康診断は法律上の義務であり、その費用は原則として派遣会社（派遣元）が負担します。 これは、派遣社員であっても正社員と同様に、健康で安全に働く権利が法律で守られているためです。
法律で定められた派遣会社の義務
派遣社員の健康診断の実施は、労働安全衛生法という法律で定められた事業者（この場合は派遣会社）の義務です。
派遣会社は、雇用する労働者（派遣社員）の健康を管理する責任を負っています。そのため、対象となる派遣社員に対して健康診断を実施し、その結果を記録・保管しなければなりません。派遣先企業ではなく、雇用主である派遣会社に実施義務があるという点が重要なポイントです。
費用は原則派遣会社が全額負担
健康診断の費用についても、労働安全衛生法で定められています。法律で義務付けられている健康診断の費用は、事業者が負担すべきものとされています。
したがって、法定の検査項目に関する費用は、原則として派遣会社が全額負担します。自己負担を求められることは基本的にありません。ただし、法定項目以外のオプション検査（人間ドックの追加項目など）を希望する場合は、その分の費用は自己負担となることが一般的です。
健康診断の対象となる派遣社員の条件
「すべての派遣社員が対象なの？」と疑問に思うかもしれません。健康診断にはいくつかの種類があり、それぞれ対象となる条件が異なります。
定期健康診断の対象者
定期健康診断とは、年に1回、定期的に受ける健康診断のことです。
こちらも「常時使用する労働者」が対象となり、雇入れ時の健康診断と同様の条件を満たす方が、1年に1回受診する必要があります。
- 契約期間が1年以上（または更新により1年以上になる予定）であること
- 1週間の労働時間数が、同種の業務に従事する正社員の4分の3以上であること
（短時間勤務の方でも、社会保険加入要件に当てはまる方は、対象者となります。）
特定業務従事者の特殊健康診断
深夜業や有害物質を扱う業務など、特定の業務に従事する派遣社員は、上記の定期健康診断に加えて、6ヶ月に1回の特殊健康診断を受ける義務があります。対象となる業務については、派遣会社から個別に案内があります。
健康診断を受けないとどうなる？
「忙しいし、面倒だから受けなくてもいいかな…」と考えてしまうこともあるかもしれません。しかし、健康診断を受けないことには、いくつかのリスクやデメリットが伴います。
派遣会社の義務違反になる可能性
前述の通り、対象となる派遣社員に健康診断を実施することは派遣会社の法律上の義務です。もしあなたが受診を拒否し続けると、派遣会社が法律違反（労働安全衛生法違反）に問われる可能性があります。
派遣会社は、労働基準監督署から指導を受けたり、罰則を科されたりするリスクを避けるため、対象者には必ず受診するよう強く促します。
契約更新に影響が出るケースも
健康診断の未受診が直接的な解雇理由になることはありません。しかし、派遣会社との信頼関係に影響し、今後の契約更新がスムーズに進まなくなる可能性は否定できません。
派遣会社は、安全配慮義務の観点から、健康状態を把握できないスタッフを安心して派遣先に紹介することが難しくなります。結果として、次の仕事の紹介が受けにくくなるなどの不利益につながることも考えられます。
自身の健康状態を把握できない
最も大きなデメリットは、あなた自身の健康状態を把握する機会を失うことです。健康診断は、自覚症状のない病気の早期発見・早期治療につながる重要な機会です。
年に一度、自分の身体と向き合うことで、生活習慣を見直すきっかけにもなります。健康に働き続けるためにも、必ず受診するようにしましょう。
健康診断の受診時期と手続きの流れ
では、実際に健康診断はいつ、どのように受ければよいのでしょうか。一般的な手続きの流れを解説します。
派遣会社からの案内と申込方法
- 案内の時期
多くの派遣会社では、対象となるスタッフに対し、契約更新のタイミングや特定の時期（例：4月～6月頃）にメールやマイページ上で健康診断の案内を送ります。 - 申込方法
案内に記載された手順に従い、Webサイトの専用フォームや電話で申し込みます。氏名やスタッフコード、希望する受診期間などを入力・伝達します。
提携医療機関の予約と受診
- 医療機関の選択
派遣会社が提携している全国の医療機関リストの中から、自宅や職場の近くなど、都合の良い場所を選びます。 - 予約
予約済みの日時に不都合が生じた場合は、必ず派遣会社に連絡しましょう。（年度内であれば変更可能） - 受診当日
予約した日時に医療機関へ行きます。健康保険証や、派遣会社から送付された受診票など、指定された持ち物を持参しましょう。
健康診断結果の受け取りと提出
健康診断の結果は、通常、受診から2～4週間後に医療機関から自宅へ郵送されます。
医療機関から直接ご自宅へ郵送される場合、結果を受け取ったら、そのコピーを派遣会社に提出する必要があります。提出方法は、担当への手渡し、または郵送等、派遣会社の指示に従ってください。提出をもって健康診断の受診が完了となりますので、忘れずに行いましょう。
派遣の健康診断に関するよくある質問
最後に、派遣社員の方が抱きやすい健康診断に関する細かい疑問にお答えします。
受診時間は勤務時間扱いで給料は出る？
「健康診断を受けている時間は、お給料の対象になりますか？」
A. 原則として、健康診断の受診時間は労働時間とは見なされず、給与は支払われないのが一般的です。
ただし、派遣会社や派遣先企業との取り決めによっては、勤務時間扱いとしてくれる場合もあります。
健康診断のために有給は使える？
「平日にしか受診できない場合、有給休暇は使えますか？」
A. はい、年次有給休暇は労働者の権利ですので、健康診断の受診を理由に取得することが可能です。
有給休暇の取得を希望する場合は、通常の休暇申請と同様に、派遣会社のルールに従って事前に申請してください。
健康診断の結果は派遣先に知られる？
「健康診断の結果が、今働いている会社に筒抜けになるのはちょっと…」
A. あなたの健康診断の結果は個人情報であり、本人の同意なく派遣先企業に開示されることはありません。
結果の提出先は、あくまで雇用主である派遣会社です。派遣会社は、あなたの健康状態を把握し、安全に働けるかを判断するために結果を確認しますが、その内容を派遣先に共有することはありませんのでご安心ください。
人間ドックの費用補助はある？
「せっかくだから、人間ドックを受けたいけど補助はありますか？」
A. 企業が費用負担するのは、法定項目健診までとなりますので、オプション項目は本人負担となります。
扶養内で働いている場合も対象？
「夫の扶養の範囲内で働いていますが、健康診断の対象になりますか？」
A. 社会保険加入要件を満たしている方（週の労働時間が20時間以上の方）であれば対象となります。
まとめ
今回は、派遣社員の健康診断について、義務や費用、受けない場合のリスクなどを詳しく解説しました。最後に、この記事の重要なポイントを振り返りましょう。
- 受診は義務
週の労働時間が正社員の4分の3以上など、一定の条件を満たす派遣社員は、法律により健康診断の受診が義務付けられています。 - 費用は会社負担
法律で定められた項目の健康診断費用は、原則として全額、雇用主である派遣会社が負担します。 - 受けないとリスクあり
未受診は派遣会社との信頼関係を損ない、契約更新に影響する可能性があります。何より、ご自身の健康管理の機会を失ってしまいます。 - 手続きは案内に従う
対象者には派遣会社から案内が届きます。案内に沿って申し込み、提携医療機関で受診しましょう。 - 結果はプライバシー保護
健康診断の結果は、本人の同意なく派遣先に知られることはありません。
健康診断は、派遣会社のためだけでなく、あなた自身が健康で安心して働き続けるために不可欠なものです。対象となっている方は、ぜひこの機会を活かしてご自身の健康状態を確認してください。もし不明な点があれば、一人で悩まずに登録している派遣会社の担当者に気軽に相談してみましょう。
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